ゴードン スネル著
ピーター ベイリー画
江戸 主人訳

ロッティの手紙


私の大好きなミーヴへ
愛をこめて
G.S.


花壇から、「痛いよ、痛いよ!」という悲しそうな泣き声が聞こえてきました。
ロッティとマックスは、花の中に子犬がいるのに気づきました。
ロッティがその子犬をだき上げると、子犬は手をさし出しました。
 「見て、見て、ロッティ!ガラスがささっているよ」とマックスは言いました。


ロッティは子犬の手をやさしくもって、ガラスを抜いてやりました。「こんな所にゴミを捨てちゃって、ひどいわ」と彼女は言いました。
 「こんなこと、やめさせないといけないね」とマックスは言いました。
 
 「そうね。なにかしましょうよ。そうだわ。手紙を書いて、世界の女王様のところに届けましょう。みんなが世界をよごしている、と女王様がおっしゃってくだされば、みんなも女王様の言うことを聞くと思うわ」とロッティは言いました。


「女王様は、僕たちの手紙なんか読んでくれないと思うよ」とマックスは言いました。
「でも、もし動物たちの足あとなんかをつけてみたら、読んでくれるかもしれないわ」とロッティは言いました。

 そこで二人は一枚の大きな紙を用意しました。そしてロッティはその紙に、「世界は一つしかありません。絶対によごさないで下さい!」と書きました。またロッティとマックスは自分たちの名前も、その紙に書きました。 


 それから二人は、さっきの子犬の手をぬかるんだ泥に押しあてて、紙にその手の印をつけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印がつきました。


 ロッティとマックスは、くちばしにチュウインガムがくっついている、鳩を見つけました。二人がチュウインガムを取ってあげると、鳩は泥の上にのって、紙にかぎつめのあとをつけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印とかぎつめの印がつきました。


 一羽のカモメが舞い降りてきました。そのカモメの翼には、海に流れ出た油がついていました。「いいわね。油は単なるゴミじゃないのよ。いろんな汚い物が世界をよごしているのよ」とロッティは言いました。
 彼女はカモメの翼の印を紙につけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印と翼の印がつきました。


 一匹の蜂が、ブンブン二人のまわりを回っていました。「もしもお花が、煙や汚れのせいで全部枯れてしまったら、蜂たちはお花をなめて、蜂蜜を作ることができなくなるわ」とロッティは言いました。
 二人は蜂の針のあとを紙につけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印、翼の印と針の印がつきました。


 一匹のカエルが池からピョンピョン飛んで出てきました。汚い泥水から出られたことを喜ぶかのように、カエルは新鮮な空気をゴクリと飲み込みました。そして長い足の印を紙につけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印、翼の印、針の印とカエルの足の印がつきました。


 池のそばに、一羽のアヒルが座っていました。そのアヒルが立ちあがると、卵が1個ありました。
「もしもアヒルのエサがよごされていたら、アヒルも他の生き物もひなをかえせなくなるわ」とロッティは言いました。
 アヒルは卵を、紙の上でクルリと一回転させました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印、翼の印、針の印、カエルの足の印と卵の印がつきました。


 二人が川のほとりを歩いていると、川に一匹のサケがいました。
「見て、見て!川の水がとってもきたないわ」とロッティが言いました。


 サケはピョンと飛びはねて、手紙の上でころがって、そこにウロコの模様をつけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印、翼の印、針の印、カエルの足の印、卵の印とウロコの印がつきました。


 ロッティとマックスは海辺にやってきました。海では一頭のイルカがはねていました。
 「もしも海が原子力のゴミでよごされたら、イルカたちは死んでしまうわ」とロッティは言いました。


 海で飛びはねていたイルカが、海辺までやってきました。イルカは、尾をぬかるんだ砂につけて、紙の上ではねて尾の印をつけました。

ロッティの手紙には、子犬の手の印、かぎつめの印、翼の印、針の印、カエルの足の印、卵の印、ウロコの印と尾の印がつきました。


 「これでできあがったの」とマックスは聞きました。
 「いいえ、もっとたくさんの印がいるわ。他の動物たちもわたしたちの手紙のことを知れば、みんなサインをしたくなるわよ」とロッティは言いました。
 そして、ロッティの言葉通りに、動物たちは紙に印をつけました。

 ライオンは歯形の印を、
 キリンはひづめの印を、



 熊は手の印を、
 オウムはかぎつめの印を、


 
 羽の印を、
 針の印を、
 足の印を、
 卵の印を、
 ウロコの印を、


 尾の印を、
 歯形の印を、
 ひづめの印をつけました。

 「さあ、できあがったわ」とロッティは言いました。
 「ポストに入れようか、ロッティ?」とマックスが言いました。
 「だめよ。この手紙をもって女王様の所まで行進するのよ」とロッティは言いました。


 ロッティとマックスが先頭に立ち、その後にロッティの手紙に印をつけた動物たちがみんな続きました。


 行進は、空に浮かんだ女王様のイスまで続きました。女王様は、「あなたは、なんて賢いのでしょう!すばらしいわ!本当によくやりましたね!私は、こんなに多くの動物の手の印や、かぎつめの印や、翼の印や、針の印や、足の印や、卵の印や、ウロコの印や、尾の印や、歯形の印やひづめの印のついた手紙を見たことがありません」とおっしゃいました。
 
 「どうなさいますか、女王様?」とロッティはたずねました。
 「私は、この手紙をもって世界中を飛びまわりましょう。そしてみんなに、世界をよごさないように言いましょう。もしもみんなが世界をよごし続ければ、世界は滅びて、その時はどうなるかわからない、と言いましょう」


 ロッティとマックスは、女王様がみんなに教えるために、飛び去っていかれるのを見あげていました。女王様は叫ばれました。
 
「世界は一つしかありません。絶対によごしてはいけません!」

「みんなに、女王様の言葉を聞いてもらいたいわ」とロッティは言いました。
でも、きっとみんなそうするわよ…


☆ (裏表紙訳)

世界は一つしかありません。絶対によごしてはいけません!

ロッティはとっても大事な手紙を持っています。
動物たちはみんな、その手紙にサインをしたがっています、
足あとやツメあとなどの珍しい印で。